木を切ったり倒したり、木を割ったりすることに用いられる道具です。
「根きり斧」「割斧」「鉞斧(はつりおの)」などがあります。
斧鍛冶は高知市の秦泉寺(じんぜんじ)に比較的集中しており、
系譜を見ると文化年間(1804年〜1817年・江戸時代後期)の
土佐が生んだ誉れ高き刀匠・“長運斎行光”(ちょううんさいゆきみつ)まで
辿ることができます。
「刻み目は七つ目を入れよ。略したり消してはならない。」
これは七代以上続いた鍛治師しか刻むことのできない我が家の掟…。
高知県東部・安芸市伊尾木の大物鍛冶・川島家には
「条件充足のための刻目」=魔除けの話が伝えられています。
斧やはつりの片面に長い三条、もう片面には四条の刻みがあります。合計七条。
これが「七つ目」と呼ばれている刻みです。
七つ目は、魔除けのために彫刻するもので、
七つ目を彫刻していない斧は「杣ジキ=調伏や祈祷を意味する行事」を
施さなくてはならないと言われています。
七つ目の数は斧やはつりにとっては「条件充足の聖数」となり
山仕事の中に、神聖を伴い汚れの中におくことの不注意や道具を紛失した際、
祟りを呼ぶかもしれない、という恐れのため
人工による呪術として、
三条側の一条に斜線の一本を加えて彫刻し、聖数の条件を消す作業や、
三条の中の一条を長めに彫刻し、長さを不揃いにする=七つ目を不完全なものとして
祟りを封ずるしきたりがあります。
そして、七代続いた鍛冶師は、七つ目を不完全なものに回避するのではなく
七つ目を切ることが許されます。
七つ目の由来については、鍛冶の元祖「天目一箇神」が神器の一つ、
三種の神器の中では天皇の持つ武力の象徴である「天業雲剣(あめのむらくものつるぎ)」を
造るときに始まると言われています。
この神より七代後、地神の世となって子孫に伝え、「天神七代を型取り」…七つ目、と呼んで
今日に及んだものとされています。
また、深山に住む仙人が斧の胴に斧の目を刻みこむ正式の法として次のように伝えています。
青竹7本を立て、これに陰陽の木綿糸(シデ)を結わえて荒行の場をつくることを
「鳥総(とぶさ)を立てる」と言い、
仙人はこの中で荒行を積み、身を清めた後「九字」を切り、印を結び祈りを捧げて法をかけると
七重結界悪魔を消滅する…。
火床(ほくぼ=鉄を熱する炉)で材料を熱してやわらかくなったところを 鎚でたたき、鍛造(たんぞう)・整形していきます。 | ||
火床に鉄を入れ、取り出して鉄を叩き、凹みをつけていきます。 その作業を繰り返すと、柄を入れるための穴があきます。これを「ひつ抜き・ひつ造り」と言い、 土佐打刃物でしかできない技と言われています。土佐打刃物が丈夫である秘密でもあります。 | ||
斧の刃先となる、鉄の中でも特に硬い鉄である鋼(はがね)を 鍛造(たんぞう)・整形していきます。 | ||
鉄を再び火床に入れ、熱した後取り出し、ひつ抜きした側の反対側のはしに切れ目を入れます。 切れ目と刃になる鋼に「硼砂(ほうしゃ=ホウ酸塩鉱物)」の粉をかけます。 硼砂は、斧本体となる鉄と刃になる鋼をぴったりと付けるために必要です。 | ||
鉄と鋼が接合したら、さらに火床で熱し、 いくども叩いて鋼側をうすく延ばして刃物の形に仕上げていきます。 | ||
鉄を高温で加熱した後、水槽に入れて冷やします。<焼入れ> …鉄が刃物にもっとも適した性質になります。 そして再び鉄に熱を加え、さらにもう一度冷やします。<焼戻し> …粘りを持たせて割れにくくするようにします。 | ||
刃を研ぎ、鋭利なものにし、仕上げていきます。 | ||
柄をつけて完成です。 |