「刻み目は七つ目を入れよ。略したり消してはならない。」
これは七代以上続いた鍛治師しか刻むことのできない我が家の掟…。
高知県東部・安芸市伊尾木の大物鍛冶・川島家には
「条件充足のための刻目」=魔除けの話が伝えられています。
斧やはつりの片面に長い三条、もう片面には四条の刻みがあります。合計七条。
これが「七つ目」と呼ばれている刻みです。
七つ目は、魔除けのために彫刻するもので、
七つ目を彫刻していない斧は「杣ジキ=調伏や祈祷を意味する行事」を
施さなくてはならないと言われています。
七つ目の数は斧やはつりにとっては「条件充足の聖数」となり
山仕事の中に、神聖を伴い汚れの中におくことの不注意や道具を紛失した際、
祟りを呼ぶかもしれない、という恐れのため
人工による呪術として、
三条側の一条に斜線の一本を加えて彫刻し、
聖数の条件を消す作業や、
三条の中の一条を長めに彫刻し、長さを不揃いにする
=七つ目を不完全なものとして
祟りを封ずるしきたりがあります。
そして、七代続いた鍛冶師は、七つ目を不完全なものに回避するのではなく
七つ目を切ることが許されます。
七つ目の由来については、鍛冶の元祖「天目一箇神」が神器の一つ、
三種の神器の中では天皇の持つ武力の象徴である
「天業雲剣(あめのむらくものつるぎ)」を
造るときに始まると言われています。
この神より七代後、地神の世となって子孫に伝え、
「天神七代を型取り」…七つ目、と呼んで
今日に及んだものとされています。
また、深山に住む仙人が斧の胴に斧の目を刻みこむ
正式の法として次のように伝えています。
青竹7本を立て、これに陰陽の木綿糸(シデ)を
結わえて荒行の場をつくることを
「鳥総(とぶさ)を立てる」と言い、
仙人はこの中で荒行を積み、身を清めた後「九字」を切り、
印を結び祈りを捧げて法をかけると
七重結界悪魔を消滅する…。
土佐打刃物を造る鍛冶師は、火を使い道具をつくりだす仕事です。
事故がなく、良い刃物をつくれるように、仕事場の中に神様をまつります。
毎年1月2日の事始めの日には、自分のつくっている道具のひな形をつくり、
神様に供えます。
また、11月8日には「ふいご祭」行います。
「ふいご」とは、火床(ほくぼ)の火を起こすための風を送る道具のことです。
この日には仕事場をきれいに掃除をし、しめ縄をはり、神社でおはらいを受け
神社のお札をいただき、仕事場の神棚に供えます。
そして、近所の人を呼んで
皿鉢料理(さわちりょうり=高知の郷土料理。大皿に刺身等の料理が盛られている)を囲んで
「おきゃく(高知は宴会のことを指す)」をしますのが伝統的なふいご祭ですが、
現在は、鍛冶師が一同に集まり、神社から太夫さんを呼んで祭りを行っています。
製造方法、焼き入れ方、商品のランクによって鉄の種類を使い分けます。
青紙・白紙…という呼び名は、鉄を包んでいる紙の色から由来されています。
■青紙スーパー 高級刃物用の鋼です。特殊溶解技術を駆使しています。
とても硬く、ねばりも強いので、一流の職人でないと扱うことができません。
■青紙1号 白紙の鋼にタングステンやクロムなどを配合して
耐久性と切れ味をアップさせています。
■青紙2号 青紙1号より硬度を少し下げています。
ねばり性を重視しているため扱いやすく、包丁に適しています。
■白紙1号 刃物用として特別に作られた不純物の少ない炭素鋼です。切れ味も良い。
■白紙2号 白紙1号より硬さを下げ、ねばり性をアップ。
刃欠けがしにくいので、扱いやすい性質です。
■普通の包丁でパンを切りやすくする
(1)包丁に熱湯をかけて温めます。
(2)包丁に付いた水気をよく拭き取ります。
(3)パンを切ってみましょう。スムーズに包丁が入ります。
※コンロの火であぶるのは刃物の切れ味を悪くする間違った方法です。
※パン切り包丁を使うことがベストです。
■きっ先を使う
海苔を切る、魚のヒレを取る、貝に切れ目を入れるなどの時には、きっ先を使いましょう。
■刃先を使う
大根やにんじんなどの野菜を切る時は、刃先を使うと切りやすいです。
■アゴを使う
ジャガイモの芽を取ったり、野菜に細かな細工をしたりするなど。
■みねを使う
肉をたたく、魚のうろこ取りなど
■腹を使う
にんにくやしょうがを切らずによりエキスを出すためには、刃の“腹”を使って押しつぶします。